「三位一体の経営」(みさき投資・中神康議)を読む
みさき投資の中神社長による著作(2020年11月発売)
何年か前に、みさき投資の投資方針について説明を聞く機会がありました。大変興味深く、もう一度その内容に触れたいと思い、本を求めました。
以下、私の印象に残った部分などを紹介します。
「障壁」にもとづいた「複利の経営」
- 安定的に、大きく富を増やすメカニズムの根底には複利がある。投資利回りと再投資を高水準で長期間持続させる。
- 実現すべき「複利」の水準、つまり業界平均並み以上の利益水準を作り出し守りぬくには「障壁」が必要。
- 「真の障壁」は、(1)コスト優位、(2)顧客の囲い込み、(3)規模の経済と顧客の囲い込みの組み合わせの3種類しかない。
- 「呆れるほどのコスト」をかけるか、「腰が抜けるほどのリスク」をとることが障壁づくりの必要条件。
ROE ≧ ROIC ≧ ROA > WACC
- 高い複利を維持・極大化するために、湧き出てくる最終利益を再投資/株主還元/内部留保に最適分配する。
- 資本生産性指標の理想的な関係は、「 ROE ≧ ROIC ≧ ROA > WACC」
図の出所:
https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/award/nlsgeu000002dzl5-att/2019_Nakagami.pdf
三位一体の経営
- 経営者と投資家の本質的な機能は相似している。煎じ詰めれば投資が仕事。投資家の思考と技術を経営に取り込む。
- 「三位一体の経営」の実現ステップ
- 役員・従業員の保有する自社株式数を引き上げる。
- (略)
- 投資家の「技術」を直接的に経営に取り込む。投資家を取締役会にいれてしまう。
感想
分散投資でなく、限られた数の会社だけを厳選して長期投資するときの考え方を学べた。また投資家としてでなく企業内で経営戦略を議論する際にも役立ちそう。
「三位一体の経営」といいつつも投資家・経営者議論がほとんどで、従業員については自社株をもつべしと述べているのみなのは已む無いところなのか。
少し気になったのは、ファンド(投資家)を取締役会に入れてしまうという部分。特定株主の優遇や、そこで入手する情報に基づくインサイダー的な取引により、一般投資家の不利益になったりしないだろうか。